開催済みのイベントレポ

【レポ】アート型ビジネス的な合宿を初めて開催したみた!

今回は、ぼくが主宰する『天プロ』というプログラムの現役・卒業生を対象に、任意参加の合宿を7月に箱根で開催したのでそのレポです。そもそも『天プロ』とは何をやるプログラムかというと、「アート型ビジネス」という新しいあり方で、ビジネス全体を「ひとつの作品」のように作っていきたい人たちが集まるプログラムです。どうやって短期で売上や集客を上げていくかを中心に考える、「マーケティング型ビジネス」とは真逆のアプローチです。

中心に据えてる「大切にしたいもの」が真逆なら、合宿においても、よくあるビジネス合宿と「アート型ビジネス的な合宿」はまったく違った世界観になるはずです。では、「マーケティング型ビジネス的な合宿とは具体的に何がどう違ったのか?」を中心に、今回はレポを書いてみようと思います。

なぜ「教えない合宿」なのか?

事前に伝えられた合宿のタイトルは、「やまけんからの挑戦状」。

参加メンバーのひとりである動画編集者のいっちーが、合宿後に自主的に作ってくれた合宿のムービーです。1分半と短いのでよかったら見てみてください。

この動画の中にあったように、今回の合宿のコンセプトは「教えない合宿」。一般的なビジネス系の合宿だと、昼間は講師の先生からのがっつりと講義を受けて、夜は懇親会でワイワイ楽しくみたいなのが一般的。でも、今回の合宿では、ぼくからの講義はゼロにした。じゃあ、みんなは何をするのかと言うと、「大半が自由時間」なので、どう過ごすのかは自分で考えて決めてね、という設定にしてみた。

なので、本当にそれぞれが思うままに、過ごす。

じぶんちのソファーで寝るかのように寝る人↓

サウナ後の外気浴で整えているように寝る人↓

屋外でひとりで考えごとをする人↓

屋内でテーブルを広く使って考えごとをする人↓

ひとりになって本を読む人↓

大きな模造紙に文字を書き続ける人↓

絵を描く子どもたち↓

ワークショップに参加する人↓

他の人と真剣に話しこむ人↓

リラックスしてゆるく対話する人↓

こんな感じで各々が、その瞬間瞬間の選択によって、自分の時間の使い方を決めて過ごしました。では、なぜこういうプログラムにしたのか?

アート型ビジネスにおいて中心にあるのは、売上ではなくその人の「個性」。だからまず最初に大事になるは、本人が自分が本来的にもっている個性に対して自覚的になること。個性とはどうすれば発揮されるかというと、安心安全な場において、本人が自由にやることを決められる状態を作ることによって発揮される。「自由になんでも選べる」状態における選択には、その人の好き嫌いが出る。この好き嫌いこそが、個性の素になる。

今の日本だと多くの人が、ルールに従うこと、他の人に迷惑をかけないこと、何かの分野で結果を出すために優先順位をつけて効率的に物事を進めること、成長するために何かのインプットをすることなど、「自分の外側」に意思決定の基準をおいている。これはガソリン車と同じで燃料を外からの給油に依存している状態に近い。

アート型ビジネスでは、燃料源を「自分の内側」に戻すということを最初にやる。つまり自家発電型に切り替えると。そのために必要なのが、「主観の回復」自由になんでも選べる状態をつくることによって、自分の好き嫌いで物事や時間の使い方を選んだときに生じる感覚を、自由に選んだときに自分の内側に感じる喜びを、身体的に体験してほしかったので、あえて「教えない合宿」にした。

心から楽しんで作ったものは、人を幸せな気持ちにする

メンバーそれぞれが自由にのびのびと過ごせる場を作る。そのために、おしゃれで自然に囲まれた合宿施設を選ぶ。でも、いい感じの会場を選ぶだけだとなんか物足りない。ぼくたちは少ない労力で、人を満足させたいんじゃない。むしろ、ビジネス全体を「ひとつの作品」のように創りあげたいんだから、作り手としての熱量やうれしさをしっかりと乗せて届けたい。作ってる側が心から楽しんでつくったものは、人を幸せな気持ちにする。

そういう想いを大切にしたかったので今回も前回の1day合宿に引き続き、運営メンバーで遊び心を発揮して、自分たちが「こんなことやってみたくない?」ってノリで思いついた仕掛けをいくつか作った。

会場についたら、各自が座るイスの上に謎のボックスが。「これ今開けたら毒ガスが出るから、まだ開けちゃダメですよ!」と言って、”待ての合図”でじらす。↓

今回の運営メンバーはぼく含め5人。ぼくひとりで運営してると思わせたかったから、運営チームがあること自体がバレないように、天プロメンバーの中から何人かに密かに声をかけた。

「今回の合宿は、シェフのお任せコースみたいな感じなんで、当日まで何をやるかは伝えませんからね。」


とだけ事前に伝えてあったので、参加者はタイムスケジュールも知らない。
期を超えての合宿なので、はじめましての人も多い。人見知りで大人数が苦手なので、「合宿みたいなのは本当は苦手」という人も結構いた。そんな参加者は未知数の期待と、大きな不安を胸に、ドキドキしながら箱根の会場までバスでやってきたんだろうな。

午後14時半。バスが遅れた組も到着し、やっと全員が揃った。

まだ、汗と緊張が混じる空気感の中、ぼくから

「じゃあ、みなさん、初の天プロ合同合宿を始めます。まずは、手元のボックスを開けてていいですよ〜。(今なら毒ガスが出なくなったんで)」


と最低限のアナウンスする。

ボックスの表紙はこんな感じ。↓

ボックスを開けてみると、まずは電車の中吊り広告のような「チラシ」が入ってて。↓

このチラシを取ると、その中には修学旅行を思い出すような「冊子」が入ってる。↓

みんなはなんだろうと、中をペラペラとめくる。↓

(何が書いてあるんだろう・・・)まだ会場は緊張感。↓

2、3分してちょっとずつ合宿の全体像が見えてくる。↓

ちょっとずつ笑いが起きる仕掛けにも気づいて、↓

緊張が和らいできた様子。↓

こうして、「シェフのお任せコース的な合宿」はゆっくりと幕をあけた。↓

当日まで具体的な中身は伏せたままでいいけど、「合宿の目的」だけは先に伝えておこうと思って、合宿が始まる数日前に参加者に下記のメッセージを送った。↓(ここは読み飛ばしてもらっても大丈夫ですが)

 何のために合宿をするのか?それは「アート型ビジネスを完成させる人を増やす」という『天プロ』のビジョンに対して、ベースキャンプのような役割を果たす仕組みとしての機会を作りたいと思ったからです。
(略)
 天プロメンバーはそれぞれが今いるステージも、中心的に取り組むも全然違う。その中で、何があったら”全員が共通して”、少しでもビジョンに近づくのか?その上で考えたことが、「動機の明確化」じゃないかというのが今回ぼくが出したひとつの仮説です。
(略)
 日々過ごしていると、「現実的なこと」に思考が行きがちです。日々の時間のやりくりや、直近の売上や課題をこなそうとすると、気づかぬうちに理想に対する目線が下がりがちです。そこで、自分にとっての究極の理想について、「自分に圧をかけて考え直す仕組み」が年1~2回あるといいなと思ったわけです。それを天プロ共通合宿でやろうと。
(略)
 ただだからと言って、普通に合宿をやるのも違うよなと。自分にしかできないことをユニークなことを形にするというアート型ビジネスのコンセプトを、合宿という企画でも体現するには、よくあるビジネス合宿で「本来あるものがない」ことは必須だと。じゃあ、何をなくせばいいかと考えたときに「教える」ということをなくすのがいいなと思いました。インプットは合宿じゃなくてもできる。だからこそ、「自分にとことん向き合って自分の心を感じで、自分の頭で考える」ような機会にしようと思いました。「教えない合宿」というのが、やまけんからのが挑戦状です。
(略)
「教えない合宿」というのを今回のコンセプトにしているぐらいなので、かなり「自由度の高いスケジューリング」にしています。


このアナウンスがあったので、参加するみんなは、「何もコンテンツはないから、どう過ごすかを自分で考えて組み立てる」っていうつもりで当日を迎えた。はず。

が、もちろんこれは「フリ」ただ単に由なだけだったら芸がない。ここはひとつ、みんながついハマってしまいそうな「罠」を作ってやろうと思ったわけです。その罠が何だったかというと、「選択性レッスン」という仕掛けです。

ボックスを開けて最初に入っていたチラシは正面から見るとこんな感じ。↓

これが、今回の合宿の目玉となる「シークレット企画」ひとつでした。

じゃあ、どこがどう罠だったのか。今回は講義がゼロで大半が自由時間なので、その時間を使って、各自が人生やビジネスにおける「自分にとっての”究極の理想”を、自分に圧をかけてしっかり考えてよ!」と言ってるのに、自由時間のタイミングでは必ず、施設内のどこかで「つい参加したくなるようなワークショップ」が3つ同時開催されているという誘惑状態をつくってみた。

「3つのどれに参加してもいいし、どれにも参加しなくてもいいので、各自が今回の合宿の目的とそのときの気分で考えてどうするか決めてね。もちろん全部に参加してると考える時間がなくなるよ。でも、逆にひとりでずっと考えてても、偶然性がある刺激がないとなかなかいいひらめきは生まれてこないよ。だからその辺は自分でよーく考えて決めてね!」


と伝えました。

当日まで選択性レッスンの存在は伏せておきたかったので、講師をお願いする人にはぼくから個別で連絡して秘密裏に準備を進めてもらった。それにしても、コンテンツは多様だ。「作詞」「作曲」を学ぶワークショップから、「自由と教養」みたいな固めのもの。「うんこ哲学という世界」という意味不明なものから、「なぜ、今ブラジリアン柔術なのか?」という流行ってもないのに社会的流行を掘り下げた新書のようなテーマまで。いろんな職種、いろんな興味関心を持ったバラエティに富んだ人が集まる天プロだからこそできる、企画になった。罠としてはうまく機能しそうだ。ふふふ。

この選択性レッスン以外でも、大小いろんな仕掛けを作った。

小ネタ的なものとしては、配るしおりの中に、箱根合宿にちなんだ「実際にある歌」に、「変なオリジナルソング」をしれっと混ぜ込んでみたりとか。↓

(↑修学旅行のしおりみたいにしたいよねっていうノリだけです、はい。)

また、割と大掛かりな仕掛けとしては、合宿の事前課題として

「あなたの”フェチ”をメールで提出してください」


ってのいうのを出してたけど、それぞれのメンバーが提出した「フェチ」をデザイン化して額縁に入れ、会場のいろんな場所に飾っておいたりとか。

これについては、初日の段階では「どのフェチが誰のものなのかわからない」状態にしておいて、2日目になって誰のかわかるという仕掛け。デザインに起こしたフェチの数が45人分ぐらいだからよくそこまでやったな・・・という圧巻の物量。これを作った運営メンバーの「執着の賜物」とも言える。↓

ビジネスはもっと自由で、楽しくて、クリエイティブであっていい。

これがアート型ビジネスで伝えたいコアメッセージ。だから、この合宿でも天プロメンバーに、そのメッセージを体現して見せたかった。今回の合宿はぼく含め運営メンバーが、好きでやってるだけだから、ボランティアベースで利益は出ない。それでも、これぐらい労力をかけて、無駄に作りこんじゃってもいいんだよっていうのを見せることで、ビジネスで表現できることの広さとおもしろさを感じてもらいたかった。

ただ、ぼくたちが静かに存在感を発揮するのは、準備の段階まで。ここからの主役は、あくもでも参加するメンバーひとりひとり。だから、いいエネルギーが流れる場の準備だけしてしまったら、あとは自然発生的な流れを見守るだけで、介入は最小限にとどめる役割にした。

自由な対話は「関係性が肥えた土壌」で自然発生する

そうそう、クリエイティブの準備以外に、もう一つだけ気をつけたことがあったんだった。それは、自分がリードしなくても、自由で濃い対話が自然発生的に生じやすくなるための適切な設定と、慎重な場づくりをすること。「関係性の土壌づくり」とでも呼ぶ準備。肥料をやってよく肥えた土壌だと、作物も豊かに育つ。それと同じような場をつくる工夫を少しだけやった。

特に天プロメンバーは内向的な人が多く、大人数が苦手な人も多い。だから、みんなが安心し、ある程度リラックスしてその場にいれる状態だけは運営としてつくっておきたい。そのためにやったことは2つだけ。

1つ目の適切な設定とは、、多様性がありながらも相性が良さそうな人を集めた少人数グループを作ること。今回であれば、4〜5人が一組になった「ワークグループ」と、2〜3人の「部屋割り」を、ぼくがメンバー同士の相性を見てグループ決めた。今回は参加者が50人でしたが、例えば参加者が300人だとしてもこのグループ決めだけは必ずぼくがやる。相性が良いメンバーが集まると場があったまり、会話の質が高くなりやすい雰囲気ができるから。ただ、すでに仲が良い人同士を集めても、それはそれで会話が予定調和的になってしまので、その辺のバランスを加味してグループを作った。

2つ目の慎重な場づくりとして、自己理解と相互理解の両方が高まるゲームをやることにした。「慎重な」とは、できるだけ誘導を避けたいという意味。合宿みたいな場で、ガッツリと講義をしてしまうと、講義の内容が「共通言語」になって会話は進むけど、自由で個性溢れる対話が損なわれてしまいやすい。完全に自由だとどのタイミングで誰とどう関わっていいのかに悩んで疲れてしまう。そこで講義以外の方法をとることにした。

やったのは『バリューカード』というゲーム。各カードには価値観を表す単語が1つ書かれてある。

やることは、「山札」か他の人の「捨て札」からカードを1枚取って↓

不要な1枚を捨てることで大事にしたい価値観5枚を手元に残すというゲーム。↓

それぞれが好きな場所を選んでゲームをし、↓

自分が手元に残したいカード(=大事にしたい価値観)について再考する。↓

ときに他のメンバーの捨て札について「え、それを捨てるの?」という驚きがあり↓

なぜ、それを大事にしたいと思ったのか?について後でその背景を知る。↓

シンプルなゲームだけど遊びながらコミュニケーションを取るうちに↓

少しずつ場に安心感が生まれてくる。↓

はじめての人と会ったときに緊張するのは、相手が何を大事にし、どんなことを考える人なのかがわからないから。お互い大事にしたい価値観を知り、その違いを尊重し合えうことができれば、最低限の安心安全が心理的に確保された関係性ができあがっていく。

関係性の土壌さえできれば、あとは自然発生的に質が高い対話があちこちで生じるようになる。運営としてはワークなどを一切準備せずとも、ノーコントロール・ノーディレクションのままで、かえって質の高い対話と自己理解のアップデートが各地で展開されていくというわけです。

運営としては準備はこれで本当に終わり。あとは、場の流れるままにーーー。

興味がなかったことに触れる「選択性レッスン」

初日、2日目と、「選択性レッスン」は盛り上がった(ようだった。実際には個人的にどうしても参加したかった「ワイン」のワークショップしか参加してないので、よくは知らないが。。)。

『珈琲の好みを掘り下げる』↓

『なぜ今ブラジリアン柔術なのか?』↓

『五感セラピー超入門』↓

『身体の声と共にあれ』↓

『大量写経瞑想』↓

『ワインの好き嫌いを掘り下げる』↓

『似顔絵を描こう』↓

もちろん、この時間にも、自分の判断でワークショップには参加せず、一人で考えごとをしたり、打ち合わせをしているメンバーもいた。初日の晩遅くまで飲みすぎて2日目は眠たかったので、ぼくは午前中いっぱいは部屋で寝ていたのはここだけの話。。

「制約の時間」を作って、深く自分に潜る

2日目の夕方には、「制約の時間」というのを設けた。合宿みたいな場だと、思うように自由に過ごしてくださいねと言っても、つい他の人と話し込んでしまいがち。場の雰囲気に流されてしまうのを避けるために、「制約の時間」の2時間だけは、他の人との会話は禁止、スマホも極力触らないというルールにした。初めての試みだったけど、この時間が思いのほか良かった。↓

好きな場所で、ゆっくりと自分と向き合える時間は貴重。天プロには会社員での活動が忙しい人や、子どもが小さいママの個人事業主の人も多いので、そういう人たちにとっては、特に希少で豊かで時間になったと思う。

自己が相対化されることで自分のユニークさに気づく

内省はものすごく大事。でも、ノートに向かって過去を振り替えて自己分析するだけだと、本当の意味での自己理解は進まない。やったことがない新しい「体験」をすること。その体験の最中に、自分の中に生じた感覚や感情をていねいに感じとって深堀りする「内省」。そして、多様な価値観をもった人との「対話」。「体験」「内省」「対話」の3つを交互に繰り返すことではじめて、自分の好き嫌いや得意苦手についての解像度があがり、自分個性が相対化される。自分のどこがどういう風にユニークなのかが見えてくる。

同じ職種の人ばかりが集まって話したり、共通する趣味を持った人の集まりだと、共通の興味関心ごとにより会話は盛り上がるけど、自己理解は大して深まらない。海外に行って現地の人と深く交流すれば、いろんな点において文化的な違いからくる「当たり前の違い」に気づくのと一緒。

多様な背景をもった人と、テーマも時間も決めずにゆるく話してみることで、自分にとっての当たり前が相手にとっての当たり前とは全然違うことに気づいてくる。

自分が本当にやりたいことが明確になったら、必要なインプットなんていくらでもできる。だからこそ、「動機の明確化」に焦点を当てた合宿では、はじめて会ったメンバーとゆったりとした対話の時間を持ち、そこで感じた違和感やひらめきをひとりになった内省の時間に掘り下げてほしいと思った。

個を大事にしながらも、他の人を存在を大切に想う

3日間の合宿はあっという間に過ぎていった。
「個」を中心に持ってきた合宿。このコンセプトは非常にうまく機能したと思う。それぞれがそれぞれにとって大事なことに集中できた3日間だった。ただ、個を尊重するだけでは、居心地がいい空間はできない。それぞれが自由に振る舞いすぎて、他の人への関心や思いやりに欠けると、安心やつながりが損なわれるから。

「個を大切にしながらも、他の人の存在を大切に想い、全体としてつながっている感覚が持てる場」でありたい。そんな想いを込めて、3日間の最初と最後だけは、あえて少人数のグループにわけず、全員で輪になってお互いの顔を見て話せる場をつくった。50人ともなるとシェアする時間はすごく長くなる分非効率だけど、とても大切なことだと思ったから。

初日の自己紹介では、緊張も混じりつつみんな楽しそうにこうやって笑ってたけど↓

3日目の最後のシェアでは、表情が明らかに変わってる人もいっぱいいた。

それぞれの中で起こったことが、笑いと涙と共に全体の場にシェアされていった。↓

それぞれの中に、起こるべきことが起こった。

そんな合宿だった。運営メンバーでは「自律性」「偶然性」というのを裏コンセプトにしたけど、まさにコンセプト通りになった。

自分に真正面から向き合う人の美しさに心が震え、数々の偶然が幾重にも積み重なることによって導かれていった必然的な結末に「生命感」なるものを感じた。自分ひとりでできることなんてたかがしれてるが、良い土壌さえあれば、人は人によってどれだけでも磨かれていくことを改めて学んだ。

追伸ー個人的な振り返り

今回の合宿は本当に良い。やってる最中にそう思った。特にそれを感じたのは、2日目の夕方に設けた「制約の時間」。一人一人自分で場所を選んで、自分に深く向き合ってる姿を見て、ぼくの中で湧き上がってくる高揚感がありました。「まさにこれがぼくが作りたかった世界そのものだ」と感じたからです。

ぼくも、何か思いつくことをやろう。何をやりたい気分かなと考えたときにピンときたのが、自分が持ち込んだ愛読書、村上春樹の『職業としての小説家』での好きなページを久々に見返すこと。ぼくが読んだ部分を引用します。

そのような自分の体験から思うのですが、自分のオリジナルな文体なり話法なりを見つけ出すには、まず出発点として「自分に何かを加算していく」よりはむしろ、「自分から何かをマイナスしていく」という作業が必要とされるみたいです。考えてみれば、僕らは生きていく過程であまりに多くのものごとを抱え込んでしまっているようです。情報過多というか、荷物が多すぎるというか、与えられた細かい選択肢があまりに多すぎて、自己表現みたいなことをしようと試みるとき、それらのコンテンツがしばしばクラッシュを起こし、時としてエンジン・ストールみたいな状態に陥ってしまいます。そして身動きがとれなくなってしまう。とすれば、とりあえず必要のないコンテンツをゴミ箱に放り込んで、情報系統をすっきりさせてしまえば、頭の中はもっと自由に行き来できるようになるはずです。
それでは、何がどうしても必要で、何がそれほど必要でないか、あるいはまったく不要であるかを、どのようにして見極めていけばいいのか?
これも自分自身の経験から言いますと、すごく単純な話ですが、「それをしているとき、あなたは楽しい気持ちになれますか?」というのがひとつの基準になるだろうと思います。もしあなたが何か自分にとって重要だと思える行為に従事していて、もしそこに自然発生的な楽しさや喜びを見出すことができなければ、それをやりながら胸がわくわくしてこなければ、そこには何か間違ったもの、不調和なものがあるということになりそうです。そういうときはもう一度最初に戻って、楽しさを邪魔している余分な部品、不自然な要素を、片端から放り出していかなくてはなりません。

〜第四回 オリジナリティーについて〜


もう何度も何度も読み直したページです。ただ、本というのは読み手の状態が変わると感じることも大きく変わるものです。

自分の中でのなんとも言い難いような気持ちの昂りを感じたまさにそのタイミングで読んでみると、何がそんなに嬉しかったのかがわかりました。何とも言えないような嬉しい気持ちになったのは、合宿という方法を使って、「自分が本当に大切にしたいこと」を、不純物を混ぜることなく表現できたと感じたからです。言葉だけではこれまでうまく伝えらなかった大事なものを、初めてちゃんと「共有」できたような実感。自分がこれまで積み上げてきたものをしっかりと受け取ってくれる人たちが、目の前に多く集まってくれていることへの喜びと感謝。自分がこれから10年20年と時間をかけて自分が感動できるような作品づくりをしていった先にどんな世界が待っているのかを、体でイメージすることができました。

それから、もう1つ良かったのは、最後の全員でのシェアの時間です。今回の合宿の中で、それぞれの中にどんな気づきがあったのかを聞いていて、少なくない人が、その人の人生においてはある種革命的とも言えるような壮大な気づきを手にしたことを知りました。その人が今感じている喜びを自分も同じように嬉しく感じたのと同時に、ぼくにとっても大きな発見がありました。

「人は何がきっかけで、本当に大切なことに気づくのかが誰も予測できないし、誰もコントロールできない」という厳然たる事実。これを何人ものシェアから実感したことが、ぼく個人としてはとてもおもしろい発見でした。

ぼくは、その人の人生がどうやったら本質的によくなるかなと考えて、何をどのタイミングで、どんな形で伝えるかを結構慎重に考えるタイプです。そこに対しては強い執着があるからです。だから、長い時間をかけて人との本質的な関わり方の最適解を模索してきたし、できるだけ高い確率で関わった人にいい変化をもたらせるようにプログラムを作ってきました。ただ、今回ものすごく大きな気づきを得てる人がそれに気づいたきっかけは、合宿中に他のメンバーが発した何気ない一言だった、みたいなことがよくありました。ぼくを含めたいろんな人との関わりやフィードバックが長い時間をかけて偶然的に積み重り、あるとき前触れなく突如、パカっといくと。多くの人が与えた「フリ」に対して、誰かの関わりが「オチ」を導き出すということです。

ということは、オチに持っていくこと、つまり相手に大きな気づきを与えるために、自分の技術を高めていったりプログラムを最適化していくことは、まったくもって無意味なことではないけど、本質からはズレてるなと。人がいつどこで大事なことに気づくかがわからないのは、人間という存在が複雑だから。ならば複雑なものに対しての受け皿として、再現性を追求して最適なものを作ろうとするよりも、複雑な存在に対しては複雑な受け皿をもって迎えようとする方が本質的に意味があるんじゃないか。これが、みんなのシェアを聞きながらぼくの中で起こった気づきです。

複雑なものは複雑な構造で受け止める。これをキーワードにすると「生命感」ってことなのかのなとふと思いました。

ぼくは、アート型ビジネスというあり方を中心に据えて、10年ぐらいかけて自分が最高と思えるプロダクト群を作ることを目標にしていますが、今回の合宿を開いた現在は10分の2年が終わった時点です。最後の完成形において大事にしたいことがこれまでは2つあって、すべてを説明できる「論理的美しさ」があること。構築した概念を、実際にいくつも「具現化」できていること。つまりアート型ビジネスがいくつも完成して、アート型ビジネス群ができていること。

だったんですが、今回「生命感」という新たなキーワードが加わりました。今はまだキーワードしかなくて、合宿から帰ってきて「動的平衡」について勉強し始めたぐらいの段階なので、生命感が意味するものが何なのかはまったく見えていません。生命感とは何かを自分なりに理解し、その概念をアート型ビジネスの中で具現化していくというのは、今まで考えていた構想がさらに壮大になって完成までの時間がさらに伸びそうだけど、その分さらにやりがいを感じるし楽しみだなとワクワクしています。尊敬するガウディの建築は生命感があるものだし、ダーウィンは生命の起源を研究した人だし。彼らからインスピレーションをもらって自分に活かしていくのが楽しみです。

個人的な振り返りも、レポも以上になりますが、前回の1day合宿を第1弾として、『論文』に続く「イベントという新しいメディアを開発する」という取り組みはまだ始まったばかりです。これからも、他でよくあるものとは違う自由でクリエイティブな企画をいくつもやっていので、今後この「新しいメディア構想」がどうやって進化し形になっていくのかを見守ってもらえるのも楽しいんじゃないかなと思っています。

また、今回のような合宿体験を、天プロメンバー以外でも提供することを検討はしていますので、興味がある方は楽しみにお待ちくださいね。

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